職業作家として歌もののコンペ向け音楽をつくるとき、仮歌は欠かせないもの。
クリエイターの方の場合でも、歌を作品に入れたいけど自分では歌えない、かといってボーカロイドに歌わせるのもなんか違う。こんなとき、本歌を入れてくれる人を探すことがあるでしょう。
この記事では、シンガーソングライターに仮歌を依頼するときのメリットや、依頼するときに気を付けるべきポイントを紹介します。
なぜこういった内容を書こうと思ったかというと、わたし自身シンガーソングライターとしてのアーティスト活動のほかに、作曲家として曲を作るときに仮歌を依頼する立場になることがあります。また、同時に仮歌を依頼される立場にもなることがあるからです。
依頼したけど思ったより修正する工数がかかってしまった…みたいな状態は、実はよくある話。
少しでもこのような事故を減らしたいと思いました…!
そもそも「仮歌」とは?
仮歌が必要な場面
「仮歌」とは、名前の通り仮の歌です。
シンガーソングライターやバンドの場合は、自分で作った歌を自分の声で歌います。
一方で、曲を自分で作らないようなアイドルやシンガーの方々は、作家さんが作った提出曲を集めて聴いて、聴いた曲の中から歌う曲を選ぶ形を採ります。
その提出する曲で歌を入れる仕事が仮歌です。ボーカルパートのメロディはもちろん、実際に歌ったときの雰囲気も伝える大切な仕事です。
最終的に歌うのは、選んだシンガーさんやアイドルグループの方々なので、あくまで「こういう曲ですよ」が伝わるように歌うことが仮歌の仕事です。
仮歌の探し方や相場
仮歌は最近だと「ココナラ」や「うたいれ!」などのサイトがあって、そこにはたくさんの方が登録しています。
だいたい4000円程度からを相場として、1コーラス(1番だけ)を依頼できるようになっていることが多いです。
まったくやり取りしたことのない方に依頼する場合、デメリットがあります。
具体的には、サイト上試聴用に貼っている歌声と、実際依頼したあとで送られてくる歌のレベルがかなり違うことがあります。
その場合は「こんなイメージじゃなかった…」と絶望することがあります。
修正の依頼をテキストで送る手間が増えたり、受け取ったデータの修正編集の手間が増えたりします。
場合によっては録りなおしを依頼することになり、追加料金が発生して予算もオーバーするかもしれません。
さんざん直した末に、やっぱり使えないとなると、また別の人に依頼する羽目になるかも。
歌ものの場合、仮歌の質が良くないと、曲の質も良くないように聞こえてしまいます。そのため、せっかく良い曲を作っても良さが伝わらない可能性が出てきます。
シンガーソングライターに仮歌を依頼するメリット
では、絶望を感じるような事故を減らすためにはどうしたらよいのでしょうか。
ここでは、歌の上手なシンガーソングライターに仮歌を依頼するメリットをご紹介します。
メリット1.高品質なボーカルデータを受け取れる
ライブハウスあがりのシンガーソングライターである程度経験を積んでいる人で、かつ見た目で売っていない人は、純粋に曲や歌そのもので売っている人が多いです(トークなどももちろんありますが)。
そのため、一般的に名前が知られていなかったとしても、スキルが高い人が多いです。
歌唱力が必要になるようなコンペ向け楽曲の場合は、合いそうな声のシンガーソングライターさんに依頼すると曲との相乗効果を出せることが多いと思います。
演奏中心に活動している場合、編集に頼った録り方をしません。
歌が上手な人はエディットもしやすい傾向にあります。
手前味噌的ですが、わたしのYouTubeでも一発録り公開をしています。
こういう声でも使える曲はときどきあるかもしれないです(ご依頼お待ちしています!)
メリット2.シンガーソングライターは表現の幅が広い
もちろん人によりますが、自分で曲を作る人は表現活動をしている分だけ表現の幅が広いことが多いと思います。
カラオケで単純に歌が上手い人との違いでしょうか。
表現の幅が要求されない曲は、むしろシンガーソングライターに依頼するとコンペ対象のアーティストに合わなくなる場合もあるので、使い分けが必要になります。
アーティスティックに歌いたい人向けに曲を作っている人や、自分の曲をアーティスティックに歌ってほしいクリエイターさんは、シンガーソングライターに歌を依頼すると表現が上乗せにできてより良い作品になるかもしれません!
メリット3.違う意見を取り入れることができる
前提として、ただ歌ってほしい場合は意見不要だと思うのですが…
モノによっては歌い手の意見が欲しいこともあると思います。
代表的なものが、キーレンジと歌詞のハマり方です。
歌を歌わない人が曲を書くときに陥りがちなのが、キーレンジが合わないことです。
明らかにボーカロイドしか出せないだろ!ぐらいの高音を指定する男性の作家さんがいたり、逆に低音はここまでが現実的じゃないか?というものがあったり。
また、メロディによって歌詞をどう置くかも大切です。
このメロディ始まりだと母音の「あいうえお」のどれが一番合っているか、など、歌ってみないとわからないこともあるので、歌詞を微修正したほうが良いときもあります。
日本語の歌と英語の歌だとリズムのまとまりや韻の踏み方が違ったりもするので、本当に合ってるのかな…と思うときは歌い手の意見を取り入れることも有効かと思います。
仮歌を依頼する作曲家やクリエイターが気を付けるべきポイント
仮歌を依頼する際には、以下のポイントに気を付けることが重要です。
コミュニケーションをしっかりとること
仮歌を依頼する場合は、作曲家としっかりコミュニケーションを取れる方を選びましょう。
特にオンラインで依頼する場合はテキストコミュニケーションになるので、文字でやり取りすることになります。
音信不通になったり、記載してほしいことを書いてくれなかったり、ということは、お互いイライラする原因になります。
これは仮歌に限らず、すべてのお仕事に言えることですが…
作曲家と歌い手が互いのアイデアや意図をしっかりと共有し合うことで、そのときに合った仮歌を発注することができます。
依頼内容を明確にすること
依頼の際は、曲の方向性や歌唱スタイルなどの要素を具体的に伝えましょう。そうすることで、依頼される側も取り組みやすいと思います。
- キーレンジ
- 歌い方
- 言える範囲でどういった方向けに作る曲か
このような情報が少ないと、予定と違うボーカルデータが送られてきます。
アーティスト自身がやれば味になる歌い方は、仮歌ではノイズになることがあります。
ぜひ先にニーズを伝えましょう。
本歌であっても、依頼内容は明確であるだけ助かると思います。
納期や金額を明確にすること
仮歌依頼には予算と納期の調整も重要です。
予算に応じた報酬の設定や支払い条件、期間の設定などを話し合いましょう。
また、納期に余裕を持たせることで、歌い手に十分な時間を与えられます。そのため、クオリティの高い仮歌制作ができます。
- 依頼受付日から納品日までの希望日数と金額
- 修正が発生した場合の金額発生の有無と修正の回数
- 買取なのか共作で名前を出すのかの明示
こういった情報は依頼前に確認したり、提示したりするべきです。
会社員など普通に仕事を依頼するときも当たり前に必要なことですね…!
仮歌は良い作品に必須のパート
仮の歌だとしても、曲がどんな曲かを伝えるためには仮歌は必須です。
歌ものなのに歌が入ってなかったらわからないですしね。
仮歌は良い作品に仕上げるのに避けては通れないものです。
自分で歌えるメンバーがいない場合は、良い仮歌依頼相手を探すしかないですね…!
有料にはなりますが、わたしも仮歌や本歌をお受けできます。もしご興味がある方がいましたらお問い合わせフォームからお問い合わせください。
良い作品作りに貢献できたらうれしいです。
料金表などはWorksの後半にも掲載していますので、よろしければご覧ください。